ラブホが日本社会に持つ価値をどの程度評価すべきか?

オリジナルのラブホテルの形は消えそうで、普通のビジネスホテルに置き換えて除去しつつある。消えてゆくラブホテルという宿泊施設が日本社会に持つ価値をどの程度評価すべきか。

 一般的に風俗営業の一つと認知されているラブホテルがどのような社会的影響を及ぼしているのかについて私は以下のように考察した。

Joe Mabel / flickr

「ラブホテル」とは?

ラブホテルは(以下、ラブホ)、具体的に言えば、プライベート保護が成されたオシャレの場で男女が性的交渉を持つ場として活用される。その宿泊施設では、料金体系が採用され、料金時間単位での利用もある

Rest and stay sign on a love hotel in Shibuya, Japan
Steve Boland / Flickr

日本人が「ラブホテル」を「ラブホ」、「カップルズホテル」、「テーマホテル」、「ファッションホテル」、または「ブティックホテル」と呼ぶのはごく一般的だ。

  現在、ラブホが保護ということをめぐって、広く議論されている。テレグラフ新聞によると、ラブホの業界は、謎に包まれている一方で「日本で最も利益をもたらしている業界の一つ 」という。現在のラブホと違う形であるが、実際に、ラブホのような場所は、江戸時代から登場し始めた。

 しかし、ラブホのほとんど道徳心のない雰囲気は、日本の保守的なイメージと価値観と相容れないものを漂わせるのであり、日本のイメージが悪化しているという意見が増加してきた。それで、ラブホが疎外されたということは問題提起した。

特に議論したい点は

  • 歴史的・美的価値
  • 社会価値とラブホのカラフルな性的事情
  • 景気刺激策としてのラブホの価値

 色々な立場を検討しながら、ラブホは文化的かつ社会的な日本景観の一部であり、日本の社会の将来に大事だということを述べたいと思う。


ラブホの「グロテスク」な外観

建設反運動 

Sineyyo / Shutterstock

  第一に、日本建築の本質と市街地構成を度外視するようなラブホの建築という事実は非常に問題となっている。1970年代、「風俗宿泊施設が郊外に展開」し、都市空間構成に考慮せずにあちこちに構築されていた。

 結果的に、ラブホは場違い施設という認識が根強く、80 年代から「いままでの不潔な湿っぽいイメージを,すべて一掃する」目的とした「環境浄化」が推進され、NIMBY(Not In My BackYard)といった建設反運動も生まれた。

 阿部・一(歴史家)によると、住民の「世界」とラブホの「世界」という両者の傾向の矛盾は「『世界』同士が, 相互に干渉し合っているために発生」したという。以前は(見えない)ラブホ「世界」の風俗宿泊施設の外観が見えるようになれ、「建物のイメージはさらにその不調和を強調」した。しかし、こういう説明は現象を抜本的に単純化している。

日本では、こういう「外」と「内」の区別が多くの社会空間構造を形成している。

 ラブホが特に70 年代〜80 年代にビジュアル問題となったのは、通常は「公共圏」の一部であると見られているラブホが、「私圏」の住宅地景観 に混同しており、そしてそれからこういう建築の格差の光景に違和感が発生してきたことからである。

Love hotels next to residential area in Japan in rain.
Love hotels next to residential area in Japan. Yuya Tamai / Flickr

 カステルス(社会学者)は、「都市構造に象徴的な意味を与えるための手段としての建築の役割」を指摘している。そのような角度から、市街地空間構成における公私が截然と視覚的に区別されていないと、物理的な市街地構成のみならず、象徴的な市街地構成、すなわちその同市街地の社会にも混乱が生じている。

 日本では、こういう「外」と「内」の区別が多くの社会空間構造を形成している。このように、市街地空間構成の重要性は、日本政府・自治体がラブホテル等の立地コントロールするために、1984 年と1985 年に改正風俗営業法(以下、風営法)を施行し、「用途地域」という立地規制手法を行ったという事実に反映している。

「コンパクトさと均一性という理想」は日本で今でもある。

 美的な視点から、高水準で均一化・画一化された住環境は住みやすいと考えられ、原則として「コンパクトさと均一性という理想」は日本で今でもある。

 日本建築の本質は、物理的に存在するものに焦点が置かれない「自然」や「無為」といった道教思想に根づいた「シンプル化」という美的理想に関連があると、アレクサンドラ・ブラック(建築家、Alexandra Black) は示唆している。つまり、目立たないことは重視されている。

 こういう意味で、目立ちのラブホの建築物が「グロテスク」としての建築だと考えられているのは決して不思議ではない。図1−a と図1−b の両図より、ラブホの広告・外観が目障りで街の景観にそぐわないものだと考える人がどんな時代でもかなり多いということがわかる。近年でも、美的上か、「私圏」の保全上か、ラブホの近く住みたくない人々が大勢である。

Love Hotel 2001/2020 comparitive study (Table 1.a)
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ラブホの建築

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歴史と機能

A drawing of passersby outside a deaijaya (an early love hotel) in 1891 in Tokyo. / 風俗画報

  一見、ラブホのいかがわしい外観が日本のイメージを悪化しているようにも見える一方で、ラブホの概念には独特な「歴史観の紐」と美的価値があり、 それが顧客ベースにアピールする必要性から生じた。

 もちろん、日本では性的内容のある宣伝・広告が違法であるのでラブホの外観そのものが「ラブホ」を表す暗黙のメッセージとしての広告になる。

しかし、ラブホの建築にはもう一つの役割がある…

「建造物自体が記号であり、その記号は『豪華』さを含意」している。

 ラブホ建築も、時代と共に変化する日本人の高級感と嗜好を具現化している。昔から、強者・上層階派の豊かな生活様式を再現しようとする傾向があった。そして遊郭が徳川時代のエリートの建築をエミュレートしたように、60 年代のモーテルや、ホテル目黒エンペラーのような城(1973 年)は欧米のエリートライフスタイルの典型であった、と。

 同時に、「建造物自体が記号であり、その記号は『豪華』さを含意」しており、その高級化・高度化する中で、「水商売色を払拭」し、正当化するようになれた。

 その上、中流階級が家を所有する経済的な余裕がようやくあったのは70 年代以来であったため、ラブホの施設は一時的に「所有」される可能性のある熱望的な代替品として機能した。20 世紀の初めごろまでは、「野外(皇居前広場)で愛しあうカップルが、多かった」、と井上・章一(歴史家)は述べた。

 こういう「高級化」の傾向は大阪万博(1970 年)が開催された後に特に顕著であり、一般大衆は海外旅行への憧れが、城などの風俗施設の外観や内装に反映されている。

 ただし、近年、「高級感」が再定義されてきた。この所謂ラブホテル「シンプル化」にはいくつかの理由があるが、中でも「本物志向」への欲求(例:省エネルギー、放し飼い卵、ヴィンテージの古着)、日本特有な「エキゾチシズム」の志向への欲求、そして以前のラブホの古臭い外観や内装が好まない、増えた女性顧客ベースにアピールする必要性に帰せられる 。

 特に、以前の「日本風の豪奢」が復活させた。『シルクロード遥かなり長安』というNHKのドキュメンタリーが90 年代のエスニックブームが伏線となった同時に、ハワイの代わりに、沖縄といった国内のスポットが”エキゾチックな観光地”として推進されていた 。また、ラブホは、派手な外観や内装のない「旅館のようなホテル」をコンセプトに生まれ変わった。そこに社会的かつ美的な価値観の傾向の「鏡」として価値がある。

そこに日本社会内の、社会的かつ美的な価値観の傾向の「鏡」として価値がある。

 社会変遷ニーズをもとにラブホの建築の変化のためにしろ、日本政府・自治体の立地規制と建築規制のためにしろ、ラブホへの抵抗感や不快感はある程なくなってきている。図2−a と図2−b に見ると、両図と同じで住民が現状維持を望んでおり、その割がさらに2020 年から増えたことが見える。

 水上・敬太(人類学者)の言葉を借りればこれまでのラブホの建築は、特殊なファンタジーの世界観を演出しており、日本に固有なものである。そこに日本社会内の、社会的かつ美的な価値観の傾向の「鏡」として価値があると言えよう。

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性的な非道徳性の涵養

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保守的な日本

  第二に、性行為を目的とした宿泊施設が非道徳的なものであり、日本の保守的なイメージと価値観と本質的に矛盾しているという声の台頭はある。図1−a と図1−b から見られるように、どんな時代でも「性を連想させるような内容の広告」は「否定的な感情を起こさせる」場合が多いという。それに、2001年の調査によれば、年齢が上がるにつれて、そういう広告に対する批判も厳しくなるということもわかった。

 このような宿泊施設が、浮気を奨励している、悪徳に染める施設であるからこそ、社会–特に子供−に悪い影響が及びかねないと、批判も飛び出してきた。その理由で、日本の当局は、静岡アイネといったラブホテルチェーンが計画している投資活動を何度も阻止している。

皇居前広場や井の頭公園といった場所が「男女の屋外セックスの盛り場」と「ノーマルな性の場所」である。

 以前、「素人」(一般的なカップル・夫婦等)と「玄人」(遊女等)の領分をはっきりしていた。上記の説明にある通り、壁・鍵のない住宅事情下おいては、皇居前広場や井の頭公園といった場所が「男女の屋外セックスの盛り場」と「ノーマルな性の場所」でありながら、「饗応施設における宿泊機能は玄人が利用するもの」として認識されていた。

Open space in front of imperial palace (皇居前広場).
Open space in front of the Imperial palace in Tokyo. kanesue / Panoramio
Benches at Inokashira park with sakura cherry blossoms in Tokyo, Japan.
Benches in Inokashira Park in Tokyo. Kimon Berlin / Flickr

 玄人が利用していた往時の待合や出会茶屋等の風俗施設には「ラブホテル的な機能」があったが、同じものではない。

素人と玄人の領分の間にはまだ暗黙の区別があった。

 実は、もともと素人を対象とした「連れ込み宿」と呼ばれる宿泊施設は現在のラブホの本当の原型である。20世紀初頭、素人は屋外から屋内に移動したが、素人と玄人の領分の間にはまだ暗黙の区別があった。

 その変わり目は1956年の売春防止法であった。近代化する取り組みの一環として、日本占領時代の明治政府は西洋の厳しい道徳的コードを採用した。1958年に売春防止法の施行後、日本から遊廓の姿が消され、玄人はその遊廓から素人向けの連れ込み宿や円宿という宿泊施設に移動した。

 なお、「旧遊廓からの営業形態の変更を余儀なくされた経営者たちが旅館経営へと展開」し、「偽装」の遊廓の旗を揚げたという。以上より、売春防止法には売春と風俗施設の成長を妨げるのに効果性が限られていたということが明らかにわかる。確かに、それよりも、素人と玄人の領分が「混同」しただけである。

ラブホでは、道徳上、正しさと過ちとの違いは非常に微妙な違いのみである。

 したがって、売春防止法でされた玄人という職業が違法で疑わしいとされたのと同じく、玄人が特に50年代から利用し始めたラブホ等の宿泊施設も闇営業として見なされるようになったのである。

 このように日本社会における、輸入された抑圧的な性的道徳のコードは、「性的な不快地域社会の『性の隠蔽化』」と密接に関連しており、依然としてラブホの道徳的かつ社会な価値を決定づけている。ラブホでは、道徳上、正しさと過ちとの違いは非常に微妙な違いのみである。


ラブホの性的事情と自由性

◊ 

宗教 

  しかしながら、「上の世代からそう批判された」一方で、ラブホは、社会の制約から解放される空間を提供しているのみならず、日本のサブカルチャーの一つも形成している。確かに、日本のアパートの壁が薄くて「プライバシーが脅かされて」いるから未婚者・既婚者がラブホを転用させてもらっているのは理由の一つだが、この説明のみに物足りなさを感ずる。

 実は、日本のラブホの性的事情と自由性には、想像以上に文化や社会に根が強い…

道徳とそれに伴う責任は一時停止させ、「犯罪者の共感」、あるいは「蒸発空間」という現象が発生するの。

 エロチックの受け入れとその底を流れる宗教的な歴史は、日本独特のものである。豊年祭といった祭りには長い歴史がある。しかも寺とラブホが共存している風景というのも珍しくはない。東京での上野寛永寺と思えば、ラブホがあちこちに乱立してある鶯谷のラブホテル街はその近くにある。

 なぜなら、徳川時代の将軍の寺院整理政策の以降、風俗宿泊施設と寺院が、郊外で「商売・娯楽・浮世見世物」と「礼拝」の共依存関係に追い込まれたからである。それで、「”聖なるもの”と”俗なるもの”の両者は本質的かつ深いところで、本来のありようとして」結びついており、「性欲は精神性と両立するものとして」認められた。

 このように道徳とそれに伴う責任は一時停止させ、「犯罪者の共感」、あるいは「蒸発空間」という現象が発生する。池上・英子(社会学者)はこういう場所を「無縁」・「公界」と名づけている。このような場所の「後釜」、むしろ後継者はラブホであるの。

 ラブホでは、ジャングル、宇宙船、城、ブラックライトアートの水中の世界(水商売とのラブホテルの歴史を連想させる)といった狂おしいまでに鮮烈な独自のテーマでデザインされた部屋の空間に入ると、まるで別次元の現実に入ったかのようである。「日常の身分に縛られた境涯から一時的にでも飛躍」でき、社会の制約から解放される。そこで、家族と社会の影響のない空間で自己同一性の獲得に向けながら、職場で山積みとなった緊張の解放の手段である。

  • Love hotel UFO Alien rotating bed
  • Egyptian black light art room in love hotel in Shinjuku, Tokyo, Japan
  • Chapel Christmas love hotel in Japan
  • Shibuya strawberry jam love hotel sign in Japan
  • Hotel mickey cookies in Japan
  • Love hotel pink and red Hello Kitty BDSM room with piano in Adonis love hotel (Ōsaka, Japan)
  • Hotel Zebra love hotel in Japan with bright neon light at night
  • Twin towers black light art room in love hotel
  • Blacklight art bathroom in love hotel
  • Castle love hotel in Kabukicho, Japan
  • BDSM room in love hotel in Japan
  • Love hotel sign in Japan
  • Rose lips love hotel in Japan
  • Dotonbori love hotel in Osaka, Japan
  • Love hotel room guide panel in Japan
  • Fairytale castle love hotel in Japan
  • Love hotel sign with animals and love hotel vacuum tube payment system
  • Love hotel street in Japan with greek architecture
  • Love hotel jacuzzi in Japan

80年代以降、自己同一性の追求と形成を目的とした、実験的な自分探しの傾向がある。

 特に80年代以降、自己同一性の追求と形成を目的とした、実験的な自分探しの傾向がある。また、メディアのグローバル化と医療産業の拡大も、身体とその健康や美容にのより大きな焦点を当てるようになったので、人々はより自己認識になってきているようである。この「個人化」につれて、日本社会は、家族中心社会から個人中心社会へと急速に変化している。

 ラブホテルとその周辺は「社会的弱者や性的少数者といった『マイノリティ』の受け皿として期待」されるエリアである。実は、60年代から「ブルーボーイ」の本拠地の歌舞伎町というラブホ街は、左翼政治の温床でもある。

性行為を公共圏にあるラブホ・「無縁」に保ち、自分空間を守るために公私を区別している立地規制手法(用途地域)が好むという傾向がある。

 性行為を公共圏にあるラブホ・「無縁」に保ち、自分空間を守るために公私を区別している立地規制手法が好むという傾向は図3−aと図3−bの両図に見える。そう言っても、図3−aにより、規制解除を支持している若者が増えてきたことがわかる。日本において「異世代間インタラクションから生じる問題」はかなり激しくなっただろう。

 ホー・スウィー・リン(Ho Swee Lin)が述べたように、ラブホテルは「日本の文化的景観の一部であり、日本の街の景観の一部」でもある。ラブホはこれからも重要な将来の役割を果たすだろう。

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経済的な事情と犯罪

 ◊ 

経年劣化

  第三に、ラブホ業界は日本経済史に残る汚点である。需要のピークとされたバブル期から40年近く、少子化で需要の減少と共に、施設の廃虚化が進み、不透明なラブホテル業界は左前になった。

 高齢化が着実に進展しているからこそ、日本のラブホテルはカップルからの需要減少の果ての収益低下に苦しんでいる、と。統計的に、1985年の新風営法の施行以降、1985年から2000にかけて、1985年の法律で定義された、全国の法定ラブホテルの総数は、「約11,000から約7,000に減少」したらしい。

ラブホテルと言えば、ヤクザと指定暴力団・売春と関係があるらしい。

 ラブホが業界としての成長に対する最大の障害は、ラブホ業が犯罪に関連している評判である。ラブホテルと言えば、ヤクザと指定暴力団・売春と関係があることと「ラブホテルには盗撮用カメラがある 」、という話もあるらしい。

 こういう犯罪との関連性が疑われているため、融資銀行等はラブホ業に「どこも投資に二の足が踏んでいる」。なお、金融機関からの借り入れが難しいであるからこそ、ヤクザの闇金融で建築されたラブホもあるという。

 それに、たとえ融資を受けても、その後の負債、税金、および金利が非常に高い。その結果、「健全な者と厳しい財政下にある者との格差が一段と広がっている」うち、大手ホテルグループが参入し、進出している。

ラブホ業の多くの業者が脱税と贈収賄に関与しているとよく言われている。

 従来、ラブホ業の多くの業者が脱税と贈収賄に関与しているとよく言われている。いくつかの事業所を所有する野村ファイナンスといった大企業所有者にとって、租税回避スキームの一部としてラブホテルを使用するために、ラブホテルの改装のための1000万ドルの投資は、比較的小さな投資である。そして公益財団法人が行った調査によれば、ラブホテルの運営業者が「近所の反対運動を和らげるために、自民党の政治家といった政治家や町内会への寄付に約10万ドルを準備」するのは一般であるという。

 閉鎖的なラブホ業界には腐敗の文化がまだ育ちであることが疑われている限り、投資家が投資しないという悪循環も陥り続く。

European medieval room with knight in armour in abandoned love hotel
Exploring with Josh / YouTube

 さらに、ラブホの運営コストが比較的高いのに時代の変化に合わせて改装する必要があるという事実は、火に油を注ぐのみである。ラブホが改装する余裕がない場合、その施設は質が悪化していく。つまり、経年劣化としたホテルは改装できないと、大量の顧客を逃し 、結果的に「大掛かりなリストラを断行するかホテルを閉鎖するか」という解決策しかない。

ラブホテル業は利益が少なく、リスクが相当多い。

 高齢化、投資不足、犯罪との関連性等の課題を乗り越えるのに、ある程度時間がかかるので、ラブホ業の見通しは暗い。結果的にラブホテル業は利益が少なく、リスクが相当多い。


経済的な状態

◊ 

ラブホの将来に明るい展望を…

Promotional posters for 2020 Tokyo Olympics in the metro
Masaru Kamikura / Flickr

  そうは言っても、特に2020年の東京オリンピックの開催を背景に、ラブホは、景気刺激策として重要な観光地であり、経済的な価値がある。1990年代の経済不況後、特に2003年以降、日本経済はようやく回復の兆しが見えている。

 産業統計資料は入手困難であるが、ラブホテルの業界は2004年の日本のGDPの約1%を占め(2007年の中央情報局)、さらに同業界の年間収益の推定値も2〜4兆円(約140〜300億ポンド)である。そして業界誌『レジャーホテル』によれば、「ラブホテル はパチンコ業界を抑え、国内で納税額が一番高い産業」となっている 。

1985年に風営法で、以前法的定義の曖昧なラブホに法的定義を与えたことで、ラブホの、腐りきった過去を洗い流し、ラブホの存在を「正当化」するという社会的効果が生み出された。

 ラブホテル軒数に関しては、7000軒という店舗数が正確だとは言いがたい。「擬似」のラブホ、すなわち1985年の建築規制条例にの抜け穴を回避しているホテルと、「ラブホテル化」した一般ホテルについては、従来見過ごされてきた。本当のラブホの数が実際に全国的に増加してきたとマーク・ウェスト(法史家、Mark D. West)は指摘する。

1985 Entertainment Business Control Law Japan
Ana Sobu / Ana A Raisin

 ラブホ業の節目は80年代である。1985年に風営法で、以前法的定義の曖昧なラブホに法的定義を与えたことで、ラブホの、腐りきった過去を洗い流し、ラブホの存在を「正当化」するという社会的効果が生み出されたと、法史家のマーク・ウェスト(Mark D. West)は指摘した。

 つまり、法的な施設としてラブホが日本人に認知されてきていた。結果としてラブホは、違法的・不潔というイメージから一新し、投資家や利用者の心理的な「壁」を壊して顧客ベースを増加と多様化できるようになった。

 そらに、投資に興味のあるMHS等の外国企業も参入したことで、ラブホ業が国内投資会社に投資魅力が高くなっていった。そうすると、投資家が投資しないという悪循環が壊された。

近年、性交渉の為だけではなく、女性からパーティーやカラオケ大会等の場としても用いられている。

Menu at the Rusticana hotel (Tsukuba, Ibaraki Prefecture). MMCTV ch / YouTube

 同時に、顧客の要望に応じる形で活動の幅を広げてきたラブホ業は、レジャー化の進行によって、成長の可能性を秘めている。近年、性交渉の為だけではなく、女性からパーティーやカラオケ大会等の場としても用いられることがあり、格安の「レディースプラン」も提供されており、ラブホの活用のフィールドは拡大している。業態は「ラブ」だけではなく、「レジャー」ともなったのである。そのために、ホテルの名前を変更したラブホもある。

 以前、ラブホはラブホの半分以下が地図に表示されないまで疎外されたものである一方で、近年、ラブホはAlmexやbooking.com等の宿泊施設の予約を扱う多言語のオンラインウェブサイトに掲載された。多くの外国人観光客は、ラブホといった「日本の変なところ」に魅了されており、そういう特有の空間が「日本の文化」であると考える。

Love hotel by a river with Sakura cherry blossoms in Kawasaki, Kanagawa Prefecture, Japan
Manabu Itoh / Flickr

 2030 年を目途に、6千万人の観光客を誘致する日本政府の計画に関しては、ラブホは日本の独自な穴場の一つとしてより世界に売り込むべきである。そうすることで日本政府が観光の集客力を上げられる。

今から見てきたラブホ業の可能性は氷山の一角に過ぎない。

 実上、経済の活性化という観点から、2010年の風営法改正といった規制の強化は逆効果になりかねない。

 日本の社会や経済が直面している課題と重なる部分が多いとはいえ、今から見てきたラブホ業の可能性は氷山の一角に過ぎない。


まとめに…

Old Japanese love hotel transition into a new business hotel, with two photographers
Ana Sobu / Ana A Raisin

  まとめに、ラブホテルの趨勢が、日本人の「高級感」と嗜好と、日本人の性的意識と、回復している日本経済を占う一つの指標になり得る。ラブホテルは歴史的かつ芸術的な視点から大事な場所として重んじるべきということだけではなく、文化的、経済的な要因においても、ラブホテル の価値が認識されるべきである。

 この議論も、公私の区別、社会における道徳性の形成、世代間の問題、個人中心社会への変化、ラブホ業と犯罪の関連性の問題という色々な問題に光を当てている。

 他の角度から見れば、ラブホ業界が明るい未来を掴んでいる。「シンプル化」と「レジャー化」を進んでいるラブホは、「観光先進国」を目指している日本にとって、非常に大事である。

 ラブホテルは、日本の文化と矛盾に見えるが、ラブホテルとは日本独特の性史観とホスピタリティーを演出する上での芸術性を高められた一種の社会的創造物であることが分かる。

 またこのようなラブホテル独自の発達こそ、日本のガラパゴス化を象徴するものである。従って、グローバル市場でのラブホテルの独自性を確立するため、遺産として守らないといけない。


こんな特集も :

Featured image : Ana Sobu / Ana A Raisin

英語 :

Alexandra Black, The Japanese House: Architecture and Interiors, (Tuttle Publishing, 2000)

A. Pritchard and N. Morgan, ‘Hotel Babylon? Exploring hotels as liminal sites of transition and transgression,’ Tourism Management, 27:5, (2006)

Bai Gao, ed. By William M. Tsutsui, ‘The postwar Japanese economy’, A companion to Japanese history, (John Wiley & Sons, 20 Jul 2009)

Becky Moore, ‘Top 20 cool and unusual hotels in Tokyo 2021‘, Global Grasshopper, (28 Feb 2021)

Cecilia Segawa Seigle, Yoshiwara: The glittering world of the Japanese courtesan, (University of Hawaii Press, 1991)

Claudia Hildner, Small Houses: contemporary Japanese dwellings, (Walter de Gruyter, 2012)

Helena Grinshpun, ‘The City and the Chain: Conceptualizing Globalization and Consumption in Japan,’ Japan Review, 24, (International Research Centre for Japanese Studies, 2012)

Ho Swee Lin, ‘Private Love in Public Space: Love hotels and the transformation of intimacy in contemporary Japan’, Asian Studies Review, 32:1, (Routledge, 28 May 2008)

J. H. Gilmore, B. J. Pine, ‘Differentiating Hospitality Operations via Experiences: Why Selling Services Is Not Enough’, Cornell Hotel and Restaurant Administration Quarterly, 43:3, (2002)

John Dodd, ‘Love hotel fund gets started: first specialist pink RE fund for Japan,’ Japan Inc., Gale Group, (July 2004)

Justin McCurry, ‘No sex please, we’re Japanese: love hotels clean up their act amid falling demand,’ The Guardian, (24 Dec 2016)

Mark D. West, Law in Everyday Japan: Sex, Sumo, Suicide, and Statutes, (University of Chicago Press, 15 Feb 2010)

Mark D. West, ‘Japanese Love Hotels: Legal Change, Social Change, and Industry Change,’ Michigan Law and Economics Research Paper, 2:18, (Nov 26 2002)

Matthew Alexander, Chien Chuan Chen, Andrew Maclaren, Andrew Maclaren, Kevin D O’Gorman, ‘Love motels: Oriental phenomenon or emergent sector?’, International Journal of Contemporary Hospitality Management, 22:2, (March 2010)

Michael D Basil, ‘Japanese Love Hotels : Protecting Privacy for Private Encounters’, European Advances in Consumer Research, 8, (Univeristy of Lethbridge, 2007)

Natalie Paris, ‘Who stays in a Japanese love hotel?’, The Telegraph, (17 Sep 2014)

Sarah Chaplin, Love hotels: cultural history, (Routledge, 2007)

Wesley Sasaki-Uemura, ed. By William M. Tsutsui, ‘Postwar society and culture’, A companion to Japanese history, (John Wiley & Sons, 20 Jul 2009)

Can Japan’s hotels keep up with soaring demand?,’ Hospitality net, (26 Oct 2017)

Mirka Santos, ‘Luxury hotels rising in Tokyo ahead of 2020 Olympics‘, W7 News, (11 Sep 2019)

Kristin Mariano, ‘Nearby prefectures to benefit from Tokyo 2020 hotel shortage, tourism‘, Travel Daily Media, (7 Aug 2019)

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日本語 :

一 阿部, 『景観・法令・建築: 風俗宿泊施設からみた人間と景観の相互関係』, 地理学評論, 64A巻, 4号, (1991年)

憲太 阿部, 姥浦 道生,『自治体のラブホテル建築規制条例に基づくラブホテルの立地規制に関する研究 (A Study on Location Control of Love-Hotels Based on Building Regulation Ordinance for Love-Hotels)』, 公益社団法人日本都市計画学会 都市計画論文集, 52巻, 3号, (2017年10月)

謙一郎 秋山, 『ラブホ代わりから貧困層、闇稼業まで…レンタルルームはなぜ流行る』, Diamond online, (2016年7月30日)

沙也果 青見, 『宿泊施設の設備利用率に関する研究: Study on equipment’s utilization factors of hotel』, (未刊卒業研究・作品)

将 麻生,『近代日本におけるキリスト教集団をめぐる排除の景観: 1930 年代の二つの排撃事件を事例として(The landscapes of exclusion concerning Christian groups in modern Japan: The case of two incidents in the 1930’s)』, E-journal GEO, 11巻, 1号, (2016年)

英子 池上,『美と礼節の絆: 日本における交際文化の政治的起源』, (NTT出版, 2005年6月30日)

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敬太 水上, 『都市郊外における風俗宿泊施設の立地とパート従業員の雇用システムの成立 : 京都南インターチェンジ付近を例として』, 立命館地理学, 21号, (2009年)

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夏生 竹井,『差別−トラウマ・体液・聖と穢れ(A Study on Discrimination from the Perspective of Trauma, Body fluids, and Sacredness and Uncleanness)』, 神戸大学大学院 人間発達環境学研究科研究紀要, 7巻, 1号, (2013年9月)

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秀一 寺前,『観光情報論序説 〜進化人流論の試み〜』, 地域政策研究(高崎経済大学地域政策学会), 11巻, 2号, (2008 年9 月)

『夢空間ファッションホテル名商・巨匠の物語―もうひとつのニッポン文化史』, (双葉社, 1999年)

P.K.サンジュン,『【激白】元ラブホテル従業員が「盗撮用カメラ」について語る / 果たして真相は……?』, ロケットニュース24, (2016年11月3日)


One thought on “ラブホが日本社会に持つ価値をどの程度評価すべきか?

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